妙にハデさはなくて,でもとっても大事なことを身につまされるほどきっちりを教えてくれる。クレズは決して非難できないウイルスだ。
「クレズ・H」ウイルスが,サーカムから過去最強のウイルスの称号を奪った。感染はサーカムの倍以上の規模で,さらに拡大中だ。サブジェクトや送信者名,ファイル名などを変装させることが,クレズを大きな成功に導いている。
クレズは面白い。さまざまな偽装を使いこなすハイブリッドさ,それに巧妙に混乱につなげるポテンシャルの高さは,なかなか感動させる。だが,微妙に漂うこの「地味さ」はいったいなんなんだろう? パソコン系のニュースサイトには結構な数の記事があがっているけど,なんかニムダやサーカムの時のような盛り上がり(?)には欠ける。記事にあるように過去最強のウイルスに認定されたってのに,一般紙などではとんとお目にかからない。このつつましく奥ゆかしい存在感はなんなんだなんなんだ??
クレズの最大の特徴は,差出人の詐称。それによっていらぬ警告メールを暴発させた。もともと,ネットワークとは自己管理が必要な社会であり,他人に警告してもらったり,誰かに守ってもらうことを求めたり…というのでは,生きていけない。ウイルス対策ソフトを入れたからもう安心,なんてことは絶対なく,常に自分のことは自分で守る,そのために必要な知識と技術は得続けなくてはいけない,というのは当たり前で当然な鉄則だ。クレズは,地味に地味に,その地味な鉄則を教えてくれている。
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